21世紀の科学・環境・市民社会

大気環境学会副会長 中野道雄氏

20世紀は戦争と環境破壊によって多数の罪なき人が殺戮された悲しむべき世紀であつた。その事は21世紀に大きな影響を及ぼしている。その背景に科学の急速な進歩がある。地球環境破壊は21世紀に解決しなければならない重大な課題である。

科学は本来、人類社会の進歩・発展をもたらし人々の幸福を増大するものと認ッされて来た。科学メはその担い手である。

しかしUNESCOの主催で、1999年6撃Q6日〜7撃P日にハンガリーのブダペストで開かれた第2回世界科学会議では、科学と科学メにたいする評価が大きくかわりつつある事が感じられた。この会議では科学の責任とその対策が最も重要tチ囲として議論された。この会議は197カ国から2000人余りの参加者による大規模な国際会議であつた。この会議でとりあげられた科学の問題点のなかで、科学の成果は常に市民社会に大きな影響を与えてきたが、多くの科学倫理の問題はその内容が市民社会で公開的に議論されなかつた事から生じているので、これからの科学は市民社会に近づき市民社会の合意を得る為の努力をすべきである、としている。科学は社会の為に奉仕すると言う謙虚な姿勢が21世紀においては必要という事である。 

近年、環境教育が進められているが、その一環として科学の民主化と情報提供、情報公開を市民社会が求めていくことが重要と考えられる。s民は科学が持続可能な社会の確立に貢献することを期待しているのであって、さらに環境破壊に繋がる取り組みを拒否しなければならない。

21世紀においてはすべての人間活動を環境の面から検証すると言うくらいの厳しさが肝要である。

引用文献:Kim Jung-Wk、環境と公害、30,1(2000) 岩波書店

中野道雄(なかの・みちお)氏

1925年生まれ。気象大学校卒業後、気象庁、大阪市を経て、現在、(財)日本気象協会関西本部相談役。昭和30年代から学識者として、また行政の立場で大気汚染の調査研究、公害問題の対策に携わって来られた。現在も大阪市等自治体の環境審議会、環境影響評価委員会委員として活躍されている。

淀川公害訴訟での大気拡散評価、コージェネレーションからの排ガス影響、環境アセスメントの進め方など広範囲にご指導を受けてきました。

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