[1]「自主環境管理」の普及が21世紀の最初の課題

大阪市環境保健局技術監兼環境部地球環境課長 光岡和彦氏

規制緩和と市場経済主義が新しい活力をつくるとして、各種の取り組みが進められています。しかし、環境分野では多くの規制が新たに開始されたり、強化されつつあるのが現実です。この傾向はこれからも続くと考えられますが、同時に、自主的な取り組みの重要性も増していくものと思います。

平成9年4月から行われている大気汚染防止法に基づく有害大気汚染物質対策では、ベンゼン等3物質について排出等の基準が定められていますが、企業に届出の義務があるわけではありません。企業は排出状況を把握するとともに、基準に適合するように排出抑制に努めることとなっています。まさに、自主的な管理です。

また、PRTR法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律)では、事業者は対象化学物質について平成13年4月から1年間の排出量や移動量を把握し、14年4月以降に自治体に届け出ることとなっています。これも自主管理が基本です。

環境分野の自主管理の有力なツールがISO14001の環境マネジメントシステムです。マネジメントの手順をマニュアルとして文書化し、行動を記録保管し、これを評価し、当初の計画等を見直すシステムは、「結果 (汚染物質の排出削減) が良ければすべて良し」の気風が強い我々には馴染みにくいものですが、キッチリ記録を確認することで、今まで気づかなかった重複や無駄が見えることもあります。(コストの削減も!)自主環境管理にはISO14001 のように認証登録制度が厳密なものから、環境庁の環境活動評価プログラムのように出来るだけ参加しやすいオプションが用意されている手法もあります。大阪市も「なにわ繁盛訓」という冊子でいろいろなタイプの自主管理を紹介しています。

自主環境管理の普及が環境に配慮した社会にむけてスタートした21世紀最初の課題です。企業の皆さんの一層の取り組みに期待しています。

[2]企業が「環境に配慮した社会」をつくる主役

大阪市環境保健局技術監兼環境部地球環境課長 光岡和彦氏

「環境に配慮した社会」を21世紀に実現する鍵を握っているのは民間企業です。私達は多くの産業製品によって、快適で便利な生活を維持しています。この産業製品やサービスを環境に配慮したものに転換できるのは企業であり、これにより快適性を著しく損なうことなく環境への負荷が削減されます。

しかし、環境配慮にはお金がかかります。出来上がった製品の質が若干低下する場合もありますので、これではリスクが大きすぎて企業の取り組みが進まないでしょう。規制はこれに推進力を与えるものだと思います。

本年4月から全面的に施行される「国等による環境物品等の調達の推進に関する法律」いわゆるグリーン購入法により、国等は環境配慮物品の購入が義務づけられますので、グリーン商品の普及が進むと期待しています。そうなると環境配慮商品を生産している企業に追い風になるでしょう。

規制が厳しくなると、率先して環境負荷を削減している企業や環境マネジメントがしっかりした企業が評価され、環境優良企業に投資するエコファンドが人気をよんでいるように、融資や投資の面でも有利になると思われます。企業にとっては環境格付け手法も気になるところです。

環境に配慮し無駄を省いた経営が必要ですが、その第一歩が環境マネジメントの考えをとりいれた経営システムの見直しです。

東京都が環境ISOや品質ISOの認証取得企業の入札資格を優遇しているように、環境面でがんばっている企業を応援する仕組みも環境に配慮した企業の増加の推進力になるものと思いますが・・・・。

光岡和彦(みつおか・かずひこ)氏

1947年生まれ。京都大学大学院工学研究修士課程(衛生工学専攻)卒業後、大阪市に入庁。以来一貫して環境部門で大気・水質対策、自動車公害対策等の業務を担当。(財)地球環境センターに出向経験もあり。現在、技術監兼地球環境課長として環境基本計画の見直しや庁内の環境マネジメントシステム構築の事務局として活躍されている。

環境政策や基本計画などについて、約10年ご指導頂いている。

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