水の神秘について思うー水との係わりからー
滑ツ境企画代表取締役 技術士(建設、衛生、環境) 安カ川常孝氏
永年技術コンサルタントとして水に深く関わってきた。河川工学、海洋土万木、上水道、下水道から水質保全の技術分野は、すべて気候システムとしての水循環が係わりを持っている。最近、地球温暖化は地球環境問題の大きなテーマとなっているが、これも生態系を含めた物質循環のバランスが崩れた現象と考えられる。人間が生息している地球の表層環境内では、水は固相、液相、気相(水蒸気)の3相の形で存在する。温度・圧力の変化に伴って自由に相を変え、その度に驚くべき性質を示してくれる。
@自然現象としての水の循環サイクル
- 液相から気相に変化:液体の水から水蒸気が発生するときは気化熱を吸収する
- 気相から液相に変化:水蒸気が雨となるときは液化熱を放出する
- 液相から固相に変化:液体の水が氷となるときは凝固熱を放出する
太陽エネルギーの供給を受けて水は海面、地表面から蒸発して霧となる。これは液相から気相に変化したことになる。毎日熱帯の海で発生する低気圧は北上して台風となり、中緯度地域の地表を流下する際に、岩石の化学成分を溶解し、地形を変え、海にミネラルを運搬する。水は海水となってサイクルは完成する。
氷が水より重いと地球に生物は誕生しなかった
A沸点と密度
通常分子量の小さい物質は沸点が低い。分子量18のH2Oは100℃の沸点を持つ。ちなみに分子量34のH2Sは-70℃の沸点を持つ。もし、分子量に比例した沸点であれば水は-100℃になるはずで、大変軽い物質でありながら地表で液体として存在することができる。固相の氷は液相より密度が小さいので、氷は水に浮く。氷が水より密度が大きいと海の底に氷が堆積し、最終的に海は凍結し生命の誕生はありえなかった。
水素結合と溶解
H2Oのうち酸素(O)原子は負、水素(H)原子は正に帯電し、液体のH2O分子のOは他のH2O分子のHと水素結合している。ここに他の物質の陽イオン、陰イオンと結びついて水和する。これが溶解であり地球の物質循環の基礎である。
C(大地震のもとにもなる)地球全体の物質循環
土木技術メとしての水は流体力学の水流、圧力、浮力など力としてのしての対象であった。水質保全としての水は拡散、酸素収支、生物との係わり、化学物質の溶解などが対象に加わった。
地質汚染・地下水汚染の修復に関係するようになってから、地球全体の物質循環に関心を持つようになり、プレートテクトニクスをはじめとする地球内部ダイナミクスを調べていくと、ここでも水が深く関わっていることが分かった。
マントル対流によって地球内部の物質が循環していることは理解しても、冷たい海洋プレートが沈み込み帯ですぐマグマになるのか不思議であった。海洋でのプレート移動中に多量の水を含むことがその原因であり、この水がマントル物質の融点を下げ、沈み込んだプレートをメルトさせるのである.地球にこんな形で水が存在することはまさに奇跡であり、詳しく知れば知るほど不思議でならない。
安カ川常孝(やすかがわ・つねたか)氏
1935年生まれ。1957年金沢大学工学部土木工学科卒業後、渇恆コ組に入社。公共工事の建設に従事。その後建設コンサルタントの前田設計鰍ノ転職。1978年に技術士(建設部門)に登録。その後、環境部門、衛生工学部門の技術士に登録。1988年に滑ツ境企画を設立し、技術コンサルタントとして現在に至る。
会社設立準備に際し、コンサルタントとしてどのように準備・対応するかなど、ご指導を受けています。