大阪府の新環境総合計画の策定検討
大阪府環境審議会総合計画部会(中間報告)2001.3.より
大阪府は2025年を見通して2010年までの新環境総合計画を平成13年度中に策定する予定。事務局から本資料を入手したので、府のホームページに公表されている答申案の審議経過と合わせて読んだ。情報公開法もあり、臨場感あふれる内容が事業者や市民の立場で何をすべきか大変参考になると思われるので、要旨を紹介する。
1.計画の基本理念と目標実現の基本方向
@20世紀の経済活動の中で発生した環境上の「負の遺産」の解決、A今後に向けた「循環型社会の構築」、B「環境倫理」を基礎としたものに価値観を変革(パラダイムシフト)する必要性及び府民、NPO、事業者を含む各主体のパートナーシップの構築が基本理念として取り上げられている。長期目標を定め、これを実現する方途としては、@「循環」を基調とする元気な社会の実現、A「健康」的で安心なくらしの確保、B自然との「共生及び魅力」ある地域の実現、Cこれらの土台としての各主体の「参加」が示されている。
2.施策の展開とその留意事項
4つの基本方向ごとに合計26項目について留意事項が示されており、環境問題の間口の広さが窺がえる。どのような議論があったかの経過から、現時点での関心事を意識して取り上げる。ただし、議事録も公開されているので、発言した委員名も分かるが、そこまでは触れない。
@循環を基調とする元気な社会のために、廃棄物の減量化・リサイクルでは、レンタル・リースの活用やゼロエミッションへの取組みなどにも触れられているが、一方で製品開発段階での活動の重要性が提案されている。エネルギー利用については、廃棄物発電の導入やエネルギーの質を考えた(コージェネレーションなどによる)カスケード利用の促進が追加された。都市のヒートアイランド対策として排熱の潜熱化(空気熱交換でなく水熱交換)等も有効とされている。
A健康的で安心なくらしのために、事業者においてはその社会的責務を果たす上で、未然防止や早期対策、速やかなる情報公開などの「自主管理」の一層の推進が必要である。自動車対策はとしては、ディーゼル車に重点を置いた対策、交通需要の抑制、騒音対策など幅広な対策が必要である。廃棄物については、一般廃棄物対策や適正処理、建設廃材への取組みなど、また、工場・事業場に対して大気環境保全としてディーゼル車対策など、水環境保全については、窒素、りんに対する総量規制対策などが挙げられている。地盤環境として(土壌・地下水等)の保全が取り上げられるとともに、有害化学物質による環境リスクの低減・管理のためにPRTR法により事業者の自主管理による排出抑制、地域住民の理解の獲得が謳われている。また、
B自然等の共生及び魅力ある地域の実現に向けて、生物多様性の確保などとともに自然とのふれあいの場の活用、都市空間の形成・活用として従来の開発重視の視点から保全を意識した表現になっている。
C各主体の参加による望ましい社会の実現のために、自主的な取組みの重要性が述べられパートナーシップによる環境保全活動の中でNPOなど民間団体の活動支援とリーダー養成などに努めることの重要性が示されている。
事業活動については、環境ISOや化学物質に対するレスポンシブルケア(RC)への取組みの進展とともに、今後は中小企業の環境ISO簡易版の普及に努めるとある。さらに環境税・課徴金など経済的手法の積極的な導入を検討すべきとある。
3.計画の効果的な推進
計画の推進にあたっては、PDCA(plan do check actによる継続的改善のしくみ)をまわして適切な進行管理を行うとともに、大阪府の財政逼迫があるとしても新たな財源を確保して積極的な展開を図ること、最後に府自らが環境マネジメントシステムの推進やグリーン調達の活動などを率先して実行することで締めくくられている。