「大阪ガス環境シンポジウム2001」について
関西ビジネスインフォメーション梶@吉田政興氏
毎年、6月の環境月間中に大阪ガス環境シンポジウムが開催されるのが恒例になりました。今年も当社が企画・運営のお手伝いをさせていただきました。今年は6月1日に開催し、特別講演とパネルディスカッションを実施し、超満員の盛況で環境問題への関心の高さが窺がわれました。
パネルディスカッションで松井孝典氏は、人類は種として長く存続することが目的なら生物圏に留まるべきであった。しかしそれを選択しなかった。長く存続することが目的でないなら、何のために生きるのかそれぞれ個人の哲学と覚悟がいる、と指摘されています。
松井氏のお婆さんを持った事が人口増加につながったとする「お婆さんの仮説」の向こうをはって、「シニアの仮説」というのを考えてみました。
シニアの仮説
人類は21世紀になって始めて、現役を一歩退いたシニアを多数もった。その結果“ほどほど”という視点で社会システムを構築することが出来るようになった。人類は有史以来、物質的な富を拡大するという一方向に進んできたのが、始めて精神的な豊かさを競う新しい社会システムを創出するこができた。というのですがいかがなものでしょうか?
以下に松井孝典氏(東京大学教授理学博士)の特別講演を紹介します。
21世紀の地球システムと人間圏ー2001年環境問題を原点から考えるー
(1)俯瞰的視点
20世紀に人類は初めて月に立った。そして宇宙から地球や我々を俯瞰的に眺める視点を確保した。その視点こそ現代に生きる我々に今一番必要とされている観点である。
(2)人間圏
人類は約一万年前、狩猟採取から農耕牧畜という生き方を選択した。地球システムの構成要素として生物圏から分化して、新たに人間圏という構成要素を作って生きることになった。人類は人間圏をつくって生き始めて以来、地球システムのなかで常に人間圏への物質エネルギーの際限なき拡大を求めてきた。しかし、この傾向が限界を越えるのが21世紀で、したがって需給のアンバランスが顕在化して物不足・エネルギー不足が深刻化する。
(3)環境問題
より長く存続しうる人間圏とは、地球システムと調和的な人間圏ということになる。解決策として「レンタルの思想」を提案したい。所有するという概念をなくす。必要なのは機能であって、モノでない。人間の体の構成要素も宇宙のチリであり、死ねば元に戻る。人間も宇宙からのレンタルといえる。長く使う、余分の物は買わない。
20世紀は特異な時代
人間圏はこの100年で4倍に増えた。この割合で人口増加を続けていくと、あと 2000年ほどで人間の総重量は地球の質量と等しくなってしまう。
拡大志向、右肩上がり志向は人類の性?
5百万年前、ネアンデルタール人と人類の祖先であるホモサピエンス(現生人類)はアフリカで共存していた。その後ネアンデルタール人は絶滅し、現生人類は世界中に広がっていった。脳の重さは変わらず、理由として二つ考えられている。
「お婆さんの仮説」
現生人類は寿命が長くなる事によって、初めてお婆さんというものをもった。動物は生殖年齢を過ぎると、程なく死ぬ。現生人類がお産を経験したメスを持つ事により、子供の面倒をみる人が出来、その恩恵で、出産間隔が短くなった。また経験者の知恵により、出産時の死亡率が下がった。それらはいずれも人口増加につながった。
「明瞭に発言できる喉と舌を持った」
目の前で起こっていないことでも伝えることが出来る。抽象的概念を表現出来るようになり、思考が発達した。
吉田政興(よしだ・まさおき)
1940年生まれ。1963年姫路工業大学応用化学科卒業後、大阪ガス鰍ノ入社。都市ガスの製造関係の業務等を経て、1993年から関西ビジネスインフォメーション鰍ノ出向し常務で教育関連の新規ビジネスを担当。昨年定年退職し、同社顧問として現在に至る。
会社の先輩であり、環境シンポジウムを現在のような形に育てていただいた。