「地球環境問題とは何か」
米本昌平著、岩波新書(1994年)の要約
地球温暖化は「地球(リオ)サミット」(1992年)以来、国際政治の最重要課題となった。昨年モロッコで開催された「COP7」で漸く国際的な合意ができ、今年中にもにも「気候変動枠組み条約」の「京都議定書」は発効する見通しとなった。地球環境問題の流れを的確に理解するため紹介する。
年代 | 地球温暖化 | 酸性雨 | その他 |
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1970 | 67酸性雨問題提起 70代長距離越境大気汚染条約 |
72国連ストックホルム会議 *ソ連,東欧不参加 |
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1980 | 85フィラハ会議(国連等) 88米議会で問題化 89各種国際会議 |
81西ドイツで黒い森問題 83上記条約発効 84EC枠組み指令 88最終指令 |
88中距離核戦略全廃条約 89ベルリンの壁崩壊 *冷戦の終結 |
1990 | 90 IPCC報告(科学的アセスメント) 92 地球(リオ)サミットと気候変動枠組み条約 |
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1995 | 97 COP3と京都議定書 01 COP7と京都議定書の具体化合意 |
02議定書発効の見通し |
@地球環境問題とはどのような種類の問題か。
東西冷戦の終焉に伴い,環境安全保障の観点から地球温暖化問題が国際的に取り上げられた。温暖化と核軍縮には次の共通点がある。
a)世界大の不安と脅威、
b)脅威の実態の把握と確認が極めて困難
c)1国の経済と深く関係しており、新しい課題としてできるだけ対応していくのがよい。
別の見方をすると、冷戦の終結→世界戦争の危機の減少→エネルギー戦略の転換
→地球環境問題への配慮といった流れが見える政治的課題である。
A国連気候変動枠組み条約と地球サミットの意味
103カ国の首脳が参加した史上最大の首脳会議であり「あらゆる国において,環境面での健全な持続可能な発展を促進させる内政及び国際努力を通じて環境戦略や政策を策定すること」を目的としたもので、次の3つの立場がある。
- 米国、サウジなどエネルギーの消費を是認する立場
- EUなどCO2の排出を抑制していく立場(日本は概ねこの立場に属する)
- 東欧諸国と発展途上国は先進国の責任追求をする立場
ECなど先進国は、対策はとるが同時に発展途上国の主体的な参加が不可欠とし、CO2の排出について共通であるが差異のある責任を求めた。一方、米国には圧倒的な情報,データがあるが、国益重視の発想の国と見られ孤立化した。
B欧州の体験とわが国の進むべき道
欧州では60年代から酸性雨問題への対応を通じて、環境政党、環境外交の重要性が認識・実践された。環境改善に対して市民や個人がイニシアティブをとりうる情報提供、情報交換により環境という国際公共財を共同管理していこうとしている。
わが国は、公害防止と省エネルギー対策の達成度が断然よいこと及びODAの大きな援助実績があり、環境政策の面で国際的に大きな役割を果たすことが期待されている。縦割り行政から脱却し、環境問題を新しいイデオロギーとみなして新しい体制を構築し活動していくことが重要である。