「デザインの力」
伴野 久美子氏((有)オフィス・バン代表、大阪芸術大学非常勤講師)
どんぐりの実がふたつ。私がコーディネートさせていただいた株式会社 エコ・サポートの名刺の、アイキャッチ(ロゴマーク)です。 爽やかな新緑や燃えるような紅葉も魅力的ですが、どんぐりに込めた、エコロジーへの想いを汲み取っていただけると幸いです。
株式会社 エコ・サポートの名刺は代々再生紙100パーセントを使用。
しかし、今回はちょっと問題がありました。それは、発色が悪いという印刷上の弱点です。
そこで、現在では認知度が高まっている「ケナフ」100パーセントを使用させていただきました。名刺を手にしていただくと、そのやさしい触れ合いを感じていただけることでしょう。
「デザイン」は重要な営業ツール
「舞台のチラシ」とデザインの力
舞台のチラシは、不特定多数に配布されますが、文化施設に置いていただくのが効果的です。それは、その場にもう足を運んでいらっしゃる(文化に興味をもたれていて、時間と対価をすでに払われている)方へアプローチできるからです。
多くの置きチラシの中から手にとってもらうには、表はビジュアルに撤して、何を行うのかを知らせる(日本語が読めない外国の方にもわかる)。そして、裏には、制作意図、プログラム、プロフィールを明記(初めての試みが多いため、情報をできるだけ詳細に伝えることが集客に必要なのです)。
そこでの「デザインの力」とは、奇をてらうものではなく(古典芸能の品位を汚さない)、数多くの文字情報を読みやすくレイアウトする、ということです。
「学校案内」とデザインの力
上記のの舞台で作曲をお願いした作曲家からの依頼で、アナウンス専門学校(作曲家夫人の実家が経営)の学校案内を創ることとなりました。このような放送・芸能学校は最近新規参入組が広告宣伝を派手に行い、さすがに老舗の同校も先細り状況で、学校案内だけでもリニューアルしないか、とその作曲家が提案したのです。
実績に裏打ちされた適確な授業がこの学校の特徴なので、その信頼感を大切にするため、内容はほとんど変えないで、色合いで訴える「デザインの力」としました。
若い女性の昨今のキャスター志望熱の高まりを視野に入れて、表面をサーモンピンク一色として、学校名を英文にしました。活躍中のOBの女性キャスターのコメントも入れて、明るさ楽しさと堅実性を同居させました。この機にと、高校へ学校案内を配布しましたら、入学希望者が増加した、と喜んでくださいました。続いて所属タレントの紹介パンフレットもご注文いただいています。
「記念誌」とデザインの力
ある程度クライアント(記念誌製作担当者とスタッフ)の努力が必要なものです。すべてを業者にまかせると、多大な予算をとることができる場合以外は、似たりよったりの編集装丁になるからです。担当者・関係者の「やる気」をいかに持続させるか、そして原稿の締め切りをいかに守らせるか(たいていは、記念式典の日時が決定しているため)、それが重要な部分です。
企業の情報誌の表紙に私の作品が使われたことから、社長の出身である大学の運動部の記念誌の注文が入りました。過去には全国制覇もしたのですが、最近はそうでもないため、OBと現役に溝ができている。お互いにスポーツマンシップを呼び起こせるようなものを、とのことでした。
そこで、通常の記録とOBの思い出話以外に、そのスポーツの特徴がわかるエピソード (閑話休題)、そのスポーツを愛した大学創始者の教育姿勢、そのスポーツの要素を生かした経済界で活躍するOB紹介等、どこからでも、だれにでも興味をもっていただけるもの、読み物としてもおもしろいものとしました。
表紙はユニフォームカラーとロゴのみ、エコロジーペーパーで作った化粧箱は関係者による揮毫のみ、とシンプルな「デザインの力」で共通性・普遍性をもたせました。
その後、その記念誌をみた方から、基督教会の記念誌の注文が入りました。阪神・淡路大震災で被災し移転復興した教会です。思い出の記録を消失し、教会名も変わりましたが、その教えと信者相互の関係に変わりはない、ということをテーマに、シンプルで客観性の高い、しかもフレンドリーなものができあがりました。
最近は簡単に編集レイアウトのできるコンピュータソフトがあり、なんでコーディネートやデザインに金を払わなくてはならないのか、と思われる方もいらっしゃると存じますが、一度プロフェッショナルに仕事をさせてみては? 設備投資や営業マン等と同様、成果があがることでしょう…。
えっ?株式会社 エコ・サポートの結果をみてからですって。
山本さんがんばって!!
コメント
21世紀は女性の感性を大切にしないと崩壊しつつある男社会の中に取り残されてしまいそう。伴野さんは新聞記者の経験を経て企業との付き合いが深い。また、現代美術家としてイベント企画、一方で個展の開催などマルチタレントとして活躍されている。おかげさまで、交友を通じて楽しい経験をさせて頂いている。
伴野久美子氏(ばんの・くみこ)氏
1955 年生まれ。甲南大学経営学部卒業後、日本工業新聞社に入社。その後、フリーになり、現代美術家として各方面で活躍中。とくに関西の賑わいを取り戻すため、能、文楽、音楽などの舞台イベントの事業企画からPR用チラシの作成までをこなす。02年から大阪芸大非常勤講師。