「中部に取り込まれる関西」

関西経済が低迷している一方で中部経済の好調ぶりが目立つといわれる。大学を名古屋で過ごしたこともあり、何が違うのか興味を持って見守る中で、表題の記事が毎日新聞(2004.10.11)に掲載された。

いくつもの指標が証明

中部地方は地政学的に見て、東京と大阪(関西)を見て活動できる有利さがあり、常に関西を意識し、追いつき追い越そうと活動してきた。一方、関西は経済、地域行政ともに低迷し続けている。 阪神タイガースが昨年優勝したときの経済効果は、中日が優勝した今年の10倍との試算がある。関西の東京圏に対する心意気を示すかもしれないが、東京から見て関西はすでに一地域でしかない歯がゆさ、悔しさに対するはけ口とも見える。

  • @地域の経済成長率、求人倍率の指数、失業率などが全国平均に対し、中部は下、関西は上にある。
  • A製品出荷額は中部(3県)がシェア17.2%、近畿(大阪、京都、兵庫の3府県)の12.2%を上回っている。
  • B中部電力や東邦ガスの株価が関西電力や大阪ガスの株価よりも高い。
  • C大阪府や大阪市の財政は赤字の関連事業を抱え危機的な状況にあるとされている。

元気の元はトヨタを支える地域の総合力

トヨタは世界市場を直視し、改善・創造を続けてきたし、さらなる飛躍をめざしている。トヨタを見習って、地域の経営を経済界と行政が協力して進めざるを得ない厳しい環境が地域を育て、活性化させている。 たとえば来年開港する中部国際空港は、トヨタ方式の管理システムを導入して、予算を1000億円圧縮したといわれる。名古屋市は環境上の制約から藤前干潟の埋め立てによるごみ焼却場の建設を断念し、地域を巻き込んでごみ減量化を成功させ、市長は環境首都宣言をしてさらなる改善に取り組んでいる。

大阪市は地域で赤字の事業が続出しているのに、市会は共産党を除くオール与党体制の中で、有力な対立候補がなく、前助役が市長になるパターンを繰り返し、さらに組合が強くカラ残業や特別手当など自浄作用が余り働かない。とりわけ問題なのは近畿道構想は、大阪府と大阪市が協働してマスタープランを作りまとめる気がない限り、京都や兵庫県を巻き込んだ計画の実現可能性はほとんどないことである。

どんな形で差がついてきているか

交通インフラが生命線

一昨年秋、技術士会の研修旅行で中部電力の知多工場、トヨタの元町工場見学と下呂温泉、高山の観光に参加した。名阪国道の伊賀上野ICで休憩し、中部国際空港に隣接する知多工場まで、湾岸道路を通るとわずか1時間で、大阪や関西空港より近いのに仰天した。 ここからトヨタを通り、愛知万博の会場を横目に下呂温泉へ行く経路に沿って、大環状道路が整備中で、これが来年完成すると中部圏の交通網は磐石となる。

翻って、近畿圏では京阪奈学研都市がつくばに対抗して、民間活力の活用という旗印の下に計画・建設され30年近くになるが、いまだに交通網はよくない。高速道路は京滋バイパスができ、徐々に整備されつつあるが、慢性的な渋滞を解決できる見通しはない。地域全体での優先順位を明確化した取組みが重要である。例えば、関空、伊丹、神戸沖空港がどのような形で運用されるのか、良く分からない。国道43号線の公害訴訟で、湾岸道路の活用が期待されているが、大阪市内からの進入も難しいし、神戸市内で山陽自動車道や中国縦貫道に接続する計画が何時実現するか予測できない。この中で神戸港の荷扱い量は低迷を続けている。

滋賀県が中部に取り込まれる!

表題で示した毎日新聞の記事では、滋賀県で生産された輸出貨物積出しは、金額ベースで2003年に名古屋港・四日市港が50%弱とすでに神戸港・大阪港と同じである。阪神大震災の前には80%近くが神戸・大阪であったことを考えると、今後中部国際空港ができると、逆転するのは明白と思われる。

また、大手工作機械メーカーの森精機は本社を奈良県から名古屋に移転した。主力の伊賀工場からも近いしビジネス上断然有利という。従来、企業の東京への一極集中がいわれてきたが、トヨタは高層ビルを名古屋駅前に建設中で、海外営業部門等が東京から名古屋へ移転する計画という。

私自身は、文化度が高く住みやすい関西(神戸、大阪)二根を下ろしており、地域の活性化を本気で考え、行動する機運が高まることを願うばかりである。

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