「ごみ炭化技術の現状と今後の動向について」

鍵谷 司氏 環境計画センター専任理事  技術士(衛生工学、環境、建設)

氏は廃棄物処理に関して、国関係や地方自治体の委員会に参画されており、早くから有機性廃棄物のエネルギーリサイクルに着目してきた。今回は、CO2削減にも有効なごみ炭化技術動向について紹介していただいた。

ごみ炭化技術とその位置づけ

循環型社会形成推進基本法(H12.6)の施行に伴い、ごみ炭化技術は新たな展開の可能性がある。ごみ炭化は、木炭製造の"蒸し焼き"技術であり、熱分解技術であり、平成10年頃からRDFの利用拡大を目指して取り組みが始まった。

炭化技術は、無酸素または低酸素状態で有機物を高温に加熱し、ガス成分、液状成分、炭成分に分解する技術である。家庭ごみを炭化した場合、炭化物の製造量は原料ごみの約1/8になる。なお、ガス成分は可燃性ガスとして加熱に利用される。

普及状況と留意点

自治体における炭化施設はH14年以降全国で6箇所が稼動し、総処理能力は250トン/日程度である。利用先は、セメントキルンの燃料、製鉄所における代替石炭などである。

家庭ごみの炭化処理は、数年前から始まったもので、稼動事例で起こったトラブルを参考にして運転の安定性、安全性、維持管理性など複数の技術課題に留意する必要がある。なお、H16年に環境省によりまとめられた炭化処理施設の性能指針(案)について紹介された。

@性能に関する事項:ごみ処理能力、性状、安定稼動(90日以上連続使用など)など

A性能に関する事項の確認方法:実証施設の運転結果。データなどに基づき確認する。

炭化物の利用性について

廃棄物を原料とする炭化物は灰分、塩分、重金属類を含んでおり、性状の取り決めが必要。

  • 炭化物の性状(粒度、大きさ):塩素含有量、造粒など
  • 単位体積重量:一般には0.3〜0.4t/m3である。
  • その他:水分、灰分、低位発熱量、塩素分、揮発分、比表面積 など

都市ごみを原料とする処理工程例は、{破砕}→【乾燥】→{炭化}→{脱塩}→{乾燥}である。

今後の動向について

役割

炭化物は燃料以外にも利用できる。循環型社会形成に向けた取り組みの中で、有機物の堆肥化、飼料化、メタン発酵は製品を安定して利用しにくいことや残さの処理に課題がある。

炭化燃料は、ごみ量の1/8であり、保管、搬出、排ガスが少ない特徴がある。

CO2削減

再生可能エネルギー源として、ごみ発電、RDF発電、炭化物による助燃やその利用

国の新エネルギー導入目標の達成

2010年に廃棄物発電を417万kW(現状120万kW)、新エネルギー購入義務付けや「循環型社会形成推進基本法」に基づく廃棄物の有効利用 など

その普及に向けては安全性の実績を積み重ねることが重要である。

炭化物の利用

燃料としての利用性が現実的である。セメント製造時の助燃材、石炭やコークスの代替品、溶銑時の高温保持材などに利用される。塩素分や重金属に留意する必要がある。

その他、多孔体として活性炭化や調湿材、土壌改良材などへの利用も可能性があるが、重金属類などによる、土壌汚染などにも留意する必要がある。

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