インタビューを受けた記事

技術士会「きんきしぶだより」(2008.5号)より

インタビュアーは小牧健男技術士(化学、建設)

定年まで2年残して大阪ガスを2000年に退職した。21世紀、60歳以降の充実した人生をめざしたかったので、55歳、3回目で技術士(環境)の資格が得られたのを契機に、3年間の準備を経て会社を設立し、独立した。しかし、最初は見込み違いもいくつかあった。

それでも、色々なご縁に恵まれて、少しずつ仕事が回っていき、年を経るごとに仕事や交流の幅が広がって行った。ガス会社関連の仕事が少しできるのではと思ったが、そうでもない。ただ、コンサルをするなら、汎用性があって、顧客企業との間で1年間程度の契約をして、仕事を続けられるISOコンサルタントを目指したのは、当時の状況からすれば、適切であった。

仕事がそれほど広がらないうちは、支部の環境研究会などのお世話をしながら、積極的に技術士、コンサルタントとしての研鑽に努めた。この間の努力が有識者や企業を含めた、私の知的ネットワークの基礎となり、今を支えている。

こういった経験から言えることは、独立・開業とは、追い込まれた状態で、「窮すれば変ずる。変ずれば通ずる。」といった感覚である。一般社会では技術士の名称が、特定の分野を除いて通用しない現実を考えて、社名には説得力のあるネーミングを1年間かけて考えた。

会社を設立したとき、5〜7百万円の年収を目標にした。まず、ISOの審査員資格を取得し、審査機関による約1年間のOJT研修を受けた。年収目標の達成を主目的にするなら、ISO審査員に主体を置けば実現可能であったが、コンサル業務に力を入れたかったので、時間がかかった。

企業のISO構築の支援を主力業務として、少しずつ仕事が増えていき、収入の目標を達成した。お手伝いさせて頂いた企業による新規企業の紹介、リピートの要請等もあって、この仕事が続いている。 

最近は環境分野の調査や講演の企画、実施など仕事の間口が広がり、時間的な余裕が少なくなってきたので、今年から思い切って、ISOの審査業務を辞退した。

一方、環境重視の流れの中で、環境省が作ったエコアクション21(EA21)認証・登録制度が2004年から本格的に動き出した。この制度はビジネスモデルとしても優れており、審査人として普及活動に力を入れている。EA21の審査人は審査時に企業に対してコンサル・助言が求められるので、高度なスキルが必要である。多くの企業にとってISO14001の構築、維持の負担は大きい。企業にとっては実質役に立つマネジメントシステムの構築・運用ができると同時に、審査機関などの間接業務が少ないから、審査費用も労力もISOに較べて1/2以下になる。

私は業務の収入ランクを4段階で考えている。@同窓会などの交流やボランティアワーク、スキルアップのための研鑽、活用など、A日当にして2〜3万円、B日当5万円、C日当10万円である。主力業務の殆どはBのランクに入るが、例えば品質や環境分野のコンサルタント業務をCのランクで受けると、自分のスキル・能力が評価されていると実感できる。

Aは役所から受ける仕事などである。@の交流、勉強会、執筆などを含め、結局無駄な経験というものはなく、障害にぶつかったとき解決に向けての経験、能力として生かされていく。

私は技術屋として考えのプロセス、見通しを重視する。と同時に自分が会社時代に培ってきた経験、「如何に分かり易く技術を含むコンセプトをお客様や周囲に伝えるか」がある。私が独立したとき、「会社もできたし、これでホームページができれば体制が整いますね」といわれたが、作ったホームページでは、自分の会社・仕事のPRに留まらず、例えば、講演会などで自分が感銘を受けた内容、そのコンセプトをできるだけ平易・簡潔に人に伝えたいと思っている。今、グループで、近畿大学の森山准教授のゼミと協働で技術士などの「集合知」を集めた新しいホームページ作りに取組み始めたところである。

(文;インタビュアー小牧健男)

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