「元気な名古屋地区を考える−関西地区とどう違うか−」A

名古屋港(発表:高橋威技術士(化学))

名古屋港の見学にあたり、名古屋港管理組合(行政の組織)では、受入れを快諾してくださり、2時間半の移動、見学スケジュールを分刻みで案内対応、さらに、VIP用のポートオブ名古屋U号に乗船して幹部の方が直接、解説・質疑に応えて下さった。

発表は、かつて名古屋港の上を通る伊勢湾岸道路の下にある工場の補償調査プロジェクトや、エリトリア(アフリカ)のODAとして港湾整備事業に関わられた高橋技術士にお願いした。

名古屋港はトヨタ自動車などの輸出基地として貿易額では日本一、コンテナ取扱量でも、すでに神戸、大阪を抜き、東京、横浜に次いでわが国第3位、着実に伸びている。神戸や大阪の伸びが低いのは、地域の勢いの他、高速道路網の整備が遅れていることも要因と思われる。

世界の港湾別コンテナ取扱個数(2005)  単位(100万TEU)
@シンガポール:23 E高雄:9 22東京:3.6
A香港:22 Fロッテルダム:9 27横浜:2.9
B上海:18 Gハンブルグ:8 34名古屋:2.5
C深セン:16 Hドバイ:8 39神戸:2.3
D釜山:12 Iロサンゼルス:7 51大阪:1.8
日本の港湾取扱貨物量(2005)  単位:百万トン
港湾 @名古屋 B横浜 G大阪 H東京 I神戸
貨物量 187 133 93 92 91

高速道路網と道路工事現場(発表:藤井武技術士(建設))

今回の研修旅行では、名古屋地域での計画も含めた高速道路ネットワークの充実振りが良く分かった。中部国際空港や愛知万博などの要素が、ネットワーク化のスピードアップにうまく活かされている。名古屋環状2号線(東南部)15kmの工事現場を見学した。現地の状況から、東京との情報交換の中で国の予算を引き出して事業が順調に進んでいるとの意見もあった。環境面からの捉え方として、渋滞解消による大気汚染物質などの削減、振動・騒音の低減などのプラス面がうまく出ているが、技術的に特別という訳ではない。今の道路網の充実振りは名古屋では、コンセンサス作りを着実に行い、総論賛成、各論反対という状況ではなく、実績を積み重ねている。近畿地方のマスタープランの貧弱さが益々地域の活力の差を広げているとの指摘は当を得ていると思わざるをえない。

おわりに

今回の研修旅行は梅雨の時期、天候が心配されたが、好天に恵まれた。また、2日目は強行軍が懸念されたが、高速道路網が整備され、また、名古屋港管理組合、高速道路工事現場など受入れ側の対応が行き届き、移動もスムーズで予定どおり大阪に帰着できた。

折角の研修であり、担当を分担して報告会を開催、それぞれ専門的な立場での分析、発表により名古屋が何故元気か、関西がどの点で遅れてしまったのかを再確認できた。報告会終了後の懇親会では、旅行に参加できなかった方を含め、議論が大いに盛り上がった。

※(後記)

2008年9月、伊賀市(三重県)の大規模な廃棄物処理施設を見学した。マイクロバスで六甲アイランドを出発し、大阪市内までは湾岸線であっという間に行けたが、市内を横断・抜け出すのに渋滞の中で1時間かかった。伊賀市から東の道路は整備されているので、食品汚泥や食品残渣を処理し、生産した炭化物は名古屋の大手メーカーに肥料用原料として送られている。道路整備の差が経済に大きな影響を及ぼしていることを再度実感した。

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