民主党政権で環境問題はどう変わるか(09年9月) 石塚幹剛技術士のレポートより
いよいよ政権交代がスタートするが、地球温暖化問題への従来のスタンスと大きく異なる政策展開が始まる。その考え方の背景を理解し、どのように準備・対応するかを整理した。
民主党の環境政策
@地球温暖化対策を世界の流れに沿ったものに変え、21世紀型社会の土台作りをする。
Aそのために再生可能エネルギーの全量買取制度の導入など有効な政策を導入する。
B環境に優しく、質の高い住宅の普及を促進するため、リフォーム政策を含め推進する。
C環境分野での技術革新で世界をリードするため、再生可能エネルギーなどの技術開発を支援する。
Dエネルギー・資源の安定供給体制を確立し、開発・普及、再利用などの一元的な取り組みを図る。
E安全を第一として、国民の理解と信頼を得ながら原子力利用について着実に取り組む。
中長期目標の設定と政策展開
世界の流れはIPCCの報告書にあるように「2020年には先進国で温室効果ガスを25〜40%削減」であり、欧米での動きが定着しつつある。また、2050年には先進国は80%の削減が方向付けられている。従来の自民党の政策は産業界の意見などに配慮し、ボトムアップ的に設定してきたが、民主党はグリーン・ニューディール政策を推進し、環境と経済・社会、雇用を創出するために市場原理に任せる施策から、強力に環境政策を推進する方向に転換が図ることになる。ただし、この方策は情報公開を徹底させ、国民の合意による意識の共有化を図ることが必須条件になる。
表 新旧政権の取り組みスタンスと目標
政党の政策 | 基本姿勢 | 温室効果ガス削減 の中期目標 | 国内排出量取引制度の取り扱い | 環境税の今後の 取り扱い | |
90’年比 | 05’年比 | ||||
民主党 | 中長期ビジョンを明確にして環境政策を推進 | 25%減 | 30%減 | 2011年度から 導入を検討 | 「地球温暖化対策税」の導入検討 |
自民党 | ・技術開発重視 ・市場原理に任す |
8%減 | 15%減 | 試行中の制度を評価して対応を検討 | 環境負荷に応じた課税を推進 |
新政権で企業や家庭はどう変わるか
新政権は高い目標を掲げており、家庭用でも太陽光発電の積極的導入、エコカーの普及、リニューアルを含め住宅の断熱を強化する。世界的にはGDPの1%を環境対策に使うべきとの方向があり、年間数千億円単位の財政負担をして新しいシステムの開発・普及を支援することになる。
企業に対しては排出枠の割り当てや環境税の導入が必須の方向であり、生産システムの見直し・改善が進むことになる。同時に環境税や排出権取引から生まれる財源を有効に活用し、企業活動を支援するシステムの導入が一体となって機能する必要がある。
経済環境が厳しい中であるが、まず中長期ビジョンの明確化を図り、社会的なコンセンサスを得ることが重要である。従来の自民党の政策は業界を含め長時間かけて検討した結果2005年比15%削減が限界として、サミットでも発表したが、あまり評価されなかったようである。
民主党のこれからの施策について、戸惑いはあっても避けて通れない道筋であると考えられる。