マネジメントシステムをどう使いこなすか@
1.マネジメントシステムは経営のツール
私が独立してISOコンサルタントとしてISO9001品質マネジメントシステム(QMS)、ISO14001環境マネジメントシステム(EMS)に係わって、早10年になる。その間、ISO9001については審査人としてトレーニングを受け、ポテンシャルを維持するために審査人としても活動してきたが、時間のやりくりがつかないこと及び息苦しさが増大していくこともあり、今年から辞退させていただいた。しかしながらこの仕事は重要であり、ニーズも掘り起こすことが可能であり、今後もライフワークとして継続して取組んでいきたい。
マネジメントシステムは経営のツール
マネジメントは限られた資源(ヒト、もの、金)を活用して、最大限に効果を出すための基本的な考え方が整理されたものである。したがって、本来の目的を理解し、PDCA(プラン、ドゥー、シー、アクション)を回して、経営方針に沿って有効性を継続的に改善していくツール(道具)として、国際規格としてよく検討・構築されたシステムである。
ところで、QMSは世界の認証取得数に対してわが国の認証取得数は4万件(JABの登録)で社絵が5%程度である。それでも、目的が品質を安定させ、クレームを出さないことで、顧客満足を獲得するためのツールとして極めて有効である。
また、EMSは認証取得数が2万件、世界でのシェアは20%前後と異状に高い水準にある。CO2削減、廃棄物対応など環境問題を抜きにしてこれからの経営は難しいことから、マネジメントシステムとして経営に組み込み活用することが期待される。
普及数から考えられること
品質の重要さ、顧客満足の獲得は経営の根幹を成すもので、日本の企業でこれを重視しない企業はありえない。ところが、最近2年間の認証取得数は減少傾向が続いている。詳細を検証したわけではないが、一時期、QMSを企業経営のカンバンとして取得に走った企業が、これを上手く使い込めずに必要な文書作りなどの割に有効でないこと、結果として維持更新にかかる費用に見合わないと判断したためと考えられる。
一方、EMSが世界レベルに比べて、異常に高い普及水準にある。自動車、家電機器など世界レベルで活動している企業が取引先(サプライマネジメントシステム)に対して、EUのRoHS指令に象徴されるように、禁止されている化学物質を使っていないかなど、リスク対策の面から、認証取得を強く要請したことなどが挙げられる。事業者にとっては主要取引先からの要請で取組むものの、有効に活用しきれていないこと及びQMSと異なり、直接的に利益を生み出すマネジメントシステムでないことから、維持・更新する費用負担に見合わないと考えられ、普及は頭打ち傾向にある。
この一方でEMSとして、環境省が構築したエコアクション21(EA21)は、EMSの弱点をカバーし、これを超えた有効なシステムとして普及が進みつつあり、まだまだ組織体制も十分確立された状態ではないが、今後、相当普及すると見込まれる。