マネジメントシステムをどう使いこなすかA
2.認証・登録制度はどのような意味を持つか
QMSは大きく進化したが……
品質管理の重要性は、わが国の生命線のようなもので、1980年頃にTQC、TQMなどが華やかに取上げられた。しかし、TQCによるデミング賞の獲得が目的化して、費用効果が悪くなり、あまり取上げられなくなったようである。1987年にISO9001が国際規格としてできたが、わが国の企業はあまり熱心でなかった。1994年版の改定により、QMSの認証取得がないと、国際貿易・取引で大きな制約があると気づき、急激に取組が進みだした。
しかしながら、1994年版は顧客企業から見て、品質保証を要求するというシステムであり、結果として企業に過剰な要求をし、膨大な資料づくりなどを要求するものであった。
2000年版ができてQMSは大幅に改善されるとともに、普及も進み、取組み企業の満足度も概ね高い水準となった。 しかしながら、最近は認証取得数が減少傾向にある。
一つは、認証・登録制度の信頼性を確保する必要があるとの考えから、規格要求事項の解釈を厳密に運用することが求められること及び審査時にコンサルをしてはいけないという運用を強く求めるようになったことがある。私が所属していた審査機関でも、審査報告書の書き方が、現場の証拠(エビデンス)をしっかりと押さえたものになっていないなどにより、頻繁に書き直しを要求するようになった。私は、審査リーダーは担当しないので、直接は影響を受けないが、間接的には大きなプレッシャーを感じた。QMS規格は2012年まで大きな変更はないことを確認したので、規格に対するポテンシャルの維持は今までの蓄積を基本にすることとし、思い切って審査の仕事を辞退した。
EMSは活用しやすいか?
EMSについて、私がコンサルを担当させていただいた企業は、大手企業からの要請により取組んだところが多い。PDCAを回すためにシステムが構築されている。しかしながら、数10人規模の企業では、取組むべき項目は経営的に見てそれほど多くないので、何に取組むべきかは、環境方針をまとめれば、ほぼ明確になる。
ところが、環境負荷をすべて抽出・評価して取組むべき著しい環境側面を考える仕組みを構築し、PDCAを回す取組みができていなければ認証登録の対象にならない。また、法遵守ということで、対象の法律を調べ上げ、順守の確認をするが、日頃の活動と直接つながっていないので、独力で調査するとしても不安が付きまとう。
認証取得制度の信頼性を確保するためには規格要求事項に適合していることが必須である。1996年版から2004年版に改定されたが、実質的には大きな差異はない。しかし、規格要求事項への適合のために企業は相当の精力を使うことになるが、それに見合う効果は得られるのだろうか。
経営のツールとしてEMSを使い込むには、環境問題に対する感度を高くし、経営課題、商品開発やサービスに反映させることが重要である。また、法要求事項の順守は当然としても、環境基本法はなぜ、どのような背景の中ででき、何を事業者に期待しているのかの理解、浸透もまた重要であるが、審査の過程ではこの点はあまり重要視されない。