「元気な名古屋地区を考える−関西地区とどう違うか−」@
技術士会での2005年の研修旅行は、愛知万博の見学を兼ねて元気な名古屋地区の実情を見聞することにした。2月に開港した中部国際空港(セントレア)、日本一の貿易額を誇る名古屋港、そして、経済活動を支える高速道路網を候補地に選んだ。また、名古屋港に残された藤前干潟、高速道路の工事現場を組み込むことができた。7月に大型バスで、平均年齢60数歳、42名の大調査団で出発。8月に分担して報告会を開催した。
愛・地球博(発表:古賀正雄技術士(機械))
11時過ぎに現地に到着、17時までの自由行動の間にそれぞれが興味のある地域、展示などを楽しんだ。その後、全員でNEDO館の燃料電池など新エネルギー実証プラントを見学した。「メタン発酵システム」や「高温ガス化システム」など動く機械の側には行けずややもの足らなかった。最新システムの燃料電池は設備が大きく、すぐの実用化は難しそうとのコメントがあった。
また、会場の概要として5つのコンセプトをもとに108カ国と5国際機関の6つに分けられた「グローバル・コモン」の構成などの説明や、ロシア館のマンモス親子の写真紹介があった。
中部国際空港(セントレア)(発表:末利銕意技術士(化学、総合))
バスによる空港内の施設見学、その後1時間の空港ビルの見学ツアーができた。名古屋駅から名鉄で30分足らずの場所にあり、高速道路も整備されている。新しい観光地として大変な賑わいが続いている。動く歩道で高さ0.5階分を移動する仕組み、レストランなど集客ゾーンなどをVTRの映写で再確認した。
中部国際空港(株) | 関西国際空港(株) | |
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開港 | 2005年 | 1994年 |
規模 | 580ha | 510ha |
平均水深 | 6m | 16m |
橋の長さ | 1.8km | 3.7km |
従業員 | 300人 | 500人 |
資産(H16) | 5700億円 | 2兆300億円 |
中部国際空港は、同規模の関空との比較でその優位性が見えてくる。立地条件のよさ、機能性、利便性の追求、コストダウン努力などもあり、建設費は関空の3分の1程度に抑え、乗り継ぎの利便性、着陸料の抑制など、「コストは作るもの」との考え方で開港したことが報告された。また、航空貨物も成田や関空に80%以上依存していたものを取り戻そうとの意図が明確である。
藤前干潟(発表:藤橋雅尚技術士(化学、総合))
名古屋港の奥部、二つの川の河口に大量に土砂が流入し、そこに生態系の高い回復力が生まれた干潟ができ、日本でも最も種類の多い渡り鳥の飛来地ルートとなっている。
この地は1981年に港湾計画の中で廃棄物処分用地に決まったが、その後の環境アセスメント手続きで、市長の慎重な姿勢から、公聴会を3回開催した末、最終的に1999年に埋立事業中止を決定した。2002年には、ラムサール条約の登録湿地として登録し、これを保全している。
一方、名古屋市は廃棄物焼却場建設を断念、「ごみ非常事態宣言」を発表して未来型の環境対策実践を決意した。資源回収を進め、ごみの焼却量と埋立量を減らす取組みを推進した結果、大都市の中では最も優れた実績を残している。ちなみに、大阪市、神戸市は市民一人当たりの資源以外のごみ量は名古屋市より80%程度も多い。ただ、現地を見学した結果、干潟が陸地化する懸念もあるのではとの報告であった。