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第9号見出し

(健康) 高齢化にどう対応するか 内田淳正三重大学学長、整形外科の医師   2010/9/25 技術士全国大会記念講演より

欧米は100年かかって高齢社会になったのに、日本は1/3の速さで超高齢社会(21%以上)の23%に到達した。大事なのは健康寿命であり、一般に平均寿命より平均6年短く、誰かの世話になる必要がある。自立した生活を考えるために、私の場合はまず75歳を目標にしている。病気にかからない体づくりをすること、回りと仲良くすること、歩くこと、食べることを心がけている。

高齢での機能低下と外科的処置技術

高齢になると、身体機能、生理機能、排泄機能の低下が起こるので、これを家族に伝えることが重要である。心理特性としては、思考の柔軟性の低下が起こる。また、足の形がよくないと、痛みが出て来る。また、腰、背骨など体型の変化が発生する。
運動機能については、身体の張りがなくなるが、技術で維持はある程度可能にはなっている。代表的運動機能疾患としては、膝が悪くなる。骨粗鬆症は女性に多く、脊椎が不具合になり痛い。膝の軟骨変性について、人口関節は1000万回のテストをしているので100年持つ。生体工学として人口関節の技術は十分に高い。変形性脊椎症というのは、6~10cm背が縮んで、骨が潰れてくる。老化して 2cm身長が短くなると検査が必要である。便所に行くのが苦痛になる状態は、チタン合金で補強すれば一週間で回復できる。腰椎椎間が不安定になれば、固定すればよい。
  日本人は痛みに弱い。米国では入院費が50000円/日かかるので、一般の人は入院しない。日頃から努力して健康を維持する義務があり、甘えてはいけない。骨粗鬆性について、女性は閉経により、エストロジェンがでなくなるのが原因である。 50代で身長が短くなると治療が必要であり、クスリがある。クスリの副作用を恐れるよりは、飲む方がよい。

実態を広報し理解すること

大腿骨,股関節が折れると,人口関節を入れると対応できる。費用が80万円かかるので、車椅子でよいとする人がいる。これらは現在の年間医療費30兆円にプラス年1.3兆円増加すれば対応できるが、政府が取り上げない。この事実を国民が知る必要がある。
@膝の悪い人は700万人、A脊椎症は1500万人、B骨の異常は700万人である。サプリメントによる予防は有効である。しかし、筋骨格系について、効果の把握は難しい、

生体材料としてSUS316(ステンレス). ヴァイタリウム、チタン合金などがあり。チタンは軽い。耐機能性について強度は十分である。組織との界面に問題が残っており、固着、骨セメントなどを使うと20年持つ。セメントレス法が70%と普及している。欧米では安い方がよいとしているが、日本は7万円の支払いで手術できる。

その他、メタローシス、骨吸収には負荷をかけないとダメである。感染症は問題であり、1~3~5%は感染する。院内感染は起こるものと考える必要があり、隠すのは問題である。
  形状記憶合金としてチタンなどの材料ができてきた。他にセラミックス、、アルミナ、ジルコニアなど、現在は機能材料が変わってきた。磨耗はないが、破損の危険性が残る。その点、ハイドロキシアパタイトという材料はよい。ポリ乳酸など高分子材料、生体吸収性材料も開発されている。

機能か形態かというと快適に生活できるようになるので、機能重視がよい。例えば義足を足の裏で支えることができる。ただし、外見が悪いので、見たらびっくりする場合がある。

生活習慣の改善を図るように努めること。高齢社会は成熟社会である。死は避けられない。政府が掲げる健康日本21のアクティブ70、80の目標はよい。ポックリ80であれば幸せなことであると考えて欲しい。

コメント

2050年にはわが国の高齢者は40%近くになるとの予測がある。 老化は避けられないので、知識を持ち、医師を信頼して積極的に対応したい。かつて、母の足の痛みについて、親族間で意見が分かれたが、手術に踏み切った。おかげで94歳で亡くなるまで、歩くのに不自由しなかった。

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