
サラリーマンの特権について BC&C Network BCCメール第390号 (2010.4)より
以前、BCC-345の編集後記で下記を書きました。サラリーマンの特権とはなんだろうかと、考えたことがあります。サラリーマンの特権とは会社のお金で、自分がやりたいことを試すことが出来ることにあると思います。上手く行かなくても、稟議書の沢山の判子は連判状のようなものだから、共同責任と開き直ればよいではありませんか。もし上手く行けば出世の足がかりになるはずです。何よりも得なのは、全ての経験を自分自身のものにすることが出来ることです。
ところが日本のサラリーマンは、この特権を十分には利用していないようで、一番問題なのは、自分がやりたいことを見つけられない方が沢山おられることです。自分は何のために働くのか、何の為に生きるのかと言う問いを、自分自身に対して発して来なかったからかなと思います。
BCCNに寄せられる案件を進めて行きますと、最後は案件を引き受けるサイドの経営陣による決断の時を迎えますが、時々聞こえてくるのは、意思決定者が、私もサラリーマンなのでリスクのあることは出来ない、ということで案件が収束するケースが散見されます。事業にリスクがあるのは当然のことで、たとえ本業のコア事業と言えども、状況により非常にクリティカルな状況を迎えることがあります。一例を挙げれば、製鉄企業の高炉事業ですが、国が厳格にCO2排出量の25%削減を定めれば、高炉による事業は中止しなければならなくなるとのことです。
つまり、時間軸を少し長く取れば、絶対に安全でリスクの無い事業など、ありえないはずで、そこを如何に切り抜けていくかが、経営陣の責任であり、ただサラリーマンであるからという言葉で判断を放棄するとしたら・・・。このような考え方では、サラリーマンの特権を生かすことは絶対に無理と思われます。
なぜ日本人はリスクを必要以上に恐れるのか?その理由は戦後の長すぎた高度成長時代にあると感じております。ただひたすら本業に打ち込めば、成長した時代です。この時代、大手企業は様々な新規事業を進めました。バイオ、医薬、半導体、エレクトロニクスなどに巨額の投資をし、見事に枕を並べて討ち死にしました。それを見ていた人は、やはり新規事業など、やるべきでないと感じたのではないでしょうか。しかし大成功の裏に失敗の原因がありで、長すぎた安定経済成長は、リスクに挑戦するマインドを確実に弱めたようです。
今社員を採用するとしたら、どんな人を採用しますか?企業に忠誠心を持った人ですか?違いますね。私なら強烈な目的意識を持ち、その目的が自社の成長と整合性がある人を採用したいですね。就活のトレーンングでの、うわべのテクニックなど、本人の内面の人間性に切り込まれたら一発でアウトです。この辺は、面接をする人事の方に切り込めるものが無ければ、意味がないのですが。でも強烈な目的意識を持った人は、少ないようです。サラリーマンよ、大志を抱けです。
コメント
世界に君臨したGMの会長は「リスクがあるからもう一度調査をし直せ!」を繰り返し、結果として重要な決定を先送りするなどもあって、倒産に至ったという。一方、中国でビジネスをするためには、総経理として、リスクを意識し、責任ある決断が取れないと信頼されないという。成熟化した社会で新たな挑戦を図るためにリスク認識と決断がより重要になる。