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第9号見出し

生活・気持ちの安定を求めて―わが国の課題は―

わが国の生活は中福祉・中負担と言っているが、なぜか気持ちの面も含め安定しているとは言いがたい。外国の例を見るとうらやましい状況、参考になりそうな状況が多くある。

@住宅より自動車の方が高価な国

20年ほど前にシンガポールに観光をかねてグループで都市や住宅を視察に行った。シンガポールでは住宅政策が行き届き、国民は集合住宅を400万円程度で買えるという。生活のための必需品であり、当然のことである。一方、自動車はカローラクラスでも関税が高く450万円はした。住んでいる人にとって、自動車は成功した人のステータスでもあった。

 当時、わが国はバブルが崩壊したとはいえ、若者にとって住宅購入は無理でも自動車は身近なプライベート空間のある高級な道具であった。

A女性も社会の支えがあって仕事ができる

 わが国の都市部では、保育所が慢性的に不足しており、共働きが難しい。そして、小学校に入っても学童保育施設が低学年ではあるが、高学年になるとどうにもならない。私の娘は共働きを続けており、娘の家が近いことから家内が常に一人の孫の世話に行っているので、何とか生活が成立している。

もしも不幸にして父親が亡くなるとか離婚して母子家庭になると生活の困窮度は相当なものになる。

 一方、北欧では高福祉・高負担というが、結婚せずに子供ができても、保育所などの施設が整っており、生活が成り立つし、教育費も国の負担割合が大きいので不安感は少ない。スエーデンなど、やはり調査団の一員として15年ほど前に行く機会があった。人口が1000万人未満であり、働く場所はあるし、女性の社会進出が顕著であり、生活の質は維持できている印象を強く受けた。

Bわが国の若者等にとって生活環境は厳しい

 若者を中心に派遣切りのリスクにさらされ、正社員化が難しいばかりでなく、正社員も働き場所、雇用が縮小する中でリストラの不安にさらされている。仕事がなくなると社宅を出る事になり、住む家にすら困窮するという厳しい現実がある。また、日本人の年間所得はじりじりと下がり続けているし、とくに若年者を中心に年間所得200万円未満の者が3分の1にもなる。

C高齢者にとっての不安

 高度成長社会の中で育った高齢者を中心にわが国の貯蓄額が1000兆円以上あり、恵まれた生活者層があることは事実である。しかし、加齢とともに病気などの不安もあり、健康保険だけでは老後の不安が消えない。高齢になると蓄えたお金が減ることの不安があり、一般に20%程度しか余裕資金として使えないという。まして、現実に年金の目減りが続いており、一方で人口構成を考えると社会保険などの負担増が避けられないし、国のシステムが立ち行かなくなる不安が大きい。

D自殺者は働き盛りの男性が多い

 警察庁の統計によると1978年(昭和53年)から21年間、自殺者は25000人以下であったが、1999年(H10年)から13年間続けて30000人を超えている。増加しているのは大部分が30歳代〜60歳代の男性であり、全体の半数以上の16000人、一方同年代の女性は6000人弱である。職業別では無職者が約半数(15000人)、被雇用者(8000人)が1/4以上、原因別では健康(48%)、経済(23%)、家庭(12%)の問題が83%を占めている。働き盛りの男性に大きな負担がかかっていることが伺える。

E下り坂の国力にあった仕組みを

わが国の税金などによる歳入額は歳出額に比べてはるかに小さいため、赤字国債の累積額が増加し続けている。高齢化に伴い、医療・福祉などの金額が増加することが避けられないのであれば、歳入を増やす手段として、事業仕分けによる無駄のあぶり出しとその排除などとともに消費税の増額は避けられない。一方で、雇用を増やし可処分所得を増やす取組みが必要になる。百貨店の売り上げが連続して減少しているように、世帯の年収及び可処分所得が減少していることは間違いないので、単に景気の回復を願うだけでなく、痛みを伴っても今後に向けて明確な方向付けと経済・社会の変革が避けられない。

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