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第9号見出し

「日本のカルテ」新しい国への展開      2010.1

2010年正月にNHKラジオが「希望の国への処方箋」として、元旦から3日間の特集があった。@新しい時代の雇用のあり方、A現場(現場力)を考える、B日中新時代でのビジネスの係りについてである。1年の反省をこめて、内容を点検した。

1.新しい時代の雇用のあり方

NHKの解説で常連の金子勝慶大経済学部教授と評論家の内橋正人氏の意見でつづった。

 経済が停滞し、世界での相対的な地位の低下が続く。有効求人倍率も厳しい環境であり、再就職先が見つからないので、非正規雇用から正社員になることが目標になっている。新しい社会、経済作りが必要である。

 高校生の就職率は60%と低迷し、社会的弱者に集中しており、日本型福祉社会を目指す必要がある。

北欧では人件費はコストではなく投資であるという考え方のもとに労働生産性を高めている。付加価値の高い経済を目指し、成長しているが、日本では量産体制依存型から脱しておらず、格差は拡大し、所得が海外に移転している。

雇用のミスマッチは、@量的機会と格差、A生きがい、B社会的有用労働で発生している。例えば、介護の労働力は不足しているが、対応できていない。現実を踏まえた対応を図り、やりがいと安心感を与えること、CS(顧客満足)よりES(従業員満足を重視して成功している例がある。

日本の社会をどう変えるかビジョンを持って目指すべき方向に向けて行動が必要。農村でも6次産業化という考えで、規模拡大だけでなく、流通にも視野を広げ、積極的な展開をしている例もある。

現状では持続可能な社会に繋がらないことを認識して、新しい産業、新しい雇用の常識を作ること。利益だけでなく、社会(生きる、働く、暮らす)の統合が必要で、北欧のように会社はつぶれても人はつぶれない社会作りが必要となる。

2.現場(現場力)を考える。

 遠藤功氏(早大教授でビジネスコンサル会社を経営)と新幹線の車内販売経験を通じて飲食企業アドバイザーになった斉藤さんの意見でつづった。

 優良企業は@戦略として際立たせるものがある、A実行できる現場作りとその進化がある「考える現場」があったが、この15年間、これが劣化してきた。現場では日々変化に対応しており、現場あっての経営、力のある現場があって、これを把握することが企業力に繋がる。

 例えば、トヨタは現場力で伸びてきたが、現場起点での再構築、軌道修正を進めている。人が重要なキーワードであり、客がどう受け止めるかはサービスの内容による。斉藤さんは新幹線の中で商品写真カードなどで「商品を見える」ように工夫し、弁当作りなどの車内販売で、お客様から製造者までをつなぐコミュニケーションを図り、成果につないでいった。その他、マーケッテイングの工夫事例がいくつか紹介された。

 目標を共有し、品質確保や志が戦略展開に繋がる。現場力と本社力が融合し、しっかりと現場に向き合うことが基本として重要である。その先にお客様があり、この力を発揮すれば世界でやっていける。

3.日中新時代でのビジネスの係わり方

範雲涛(はんうんとう)氏はビジネス法務などの専門家で外交官だった原田武夫氏との意見交換。

 中国は経済成長、変化する中で、日本の貿易相手国は対中国が1位になった。中国側も日本側と協働する必要がある。上海一の高層ビルは日本の技術、資本で建設した。中国脅威論を聞くが、成長路線は日本がモデルである。米中2大国時代が到来するが、一方で日中間も重要である。現在、中国は日本の80年代と同じような状況にあるが、国が広いのでバブルはある程度吸収できる。

 日中の連携は水処理施設の中国での販売などがあり、交流には経営トップが動く必要がある。中国にはお金があり、コスト競争力もあるので、日本が食い込まないと欧米に機会を取られることになる。

 一方、中小企業にとって知的財産権保護が重要であり、リスクに対して国家戦略、支援が必要になる。

しかし、対応しないと進出のチャンスがなくなる。10年前から外国人留学生を受け入れるなど、社員として育てている。外食産業なども世界の工場から世界の市場になってきており、果敢に向かいながらリスク対策も取る。日本には日中韓の仕組みを作り参加していく能力、マーケットチャンスはある。柔らか頭が必要で、これに耐える現地の総経理(経営者)に権限を委譲するのも方向である。

 今までアメリカのレンズを通して中国を見てきたが、新時代の共通の問題としてアジアで活動していくことになる。

コメント

 大きなメガトレンドは、この1年の経過を経て見ると、いずれもここに取上げられた通りである。民主党政権になり、変革を目指しているが、基本スタンス、具体的な実行力・現場力に対する不安が強い。

例えば、経済界の声に押され、法人税の減税実施と、一方で雇用情勢の更なる悪化、個人負担の増加などが見られる。国の財政バランスが悪化しており、このままでは成り立たなくなる。きちっとした仕組みを作ってデータを整理し、これを基にした丁寧な情報公開と合意形成の取り組みを実行していかなければならない。

TPP(Trans-Pacific Partnership)が取りざたされ、多国間貿易に参画しないと日本は国際競争から取り残されるという危機が指摘されている。国内マーケットが小さい韓国では、長年にわたり主要国との自由貿易協定(FTA)締結を進めている。、米韓FTAなどを締結するために、政府は長期にわたり、農業政策に与える影響を調査・把握し、国民が納得できるように十分な農業への保障とFTAの必要性について大キャンペーンを張って合意形成を図り、実現させたといわれている。 

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