
70歳を迎えてどう生きるか(その1) 『諸先輩の心に残ることば』
会社で36年間お世話になり、独立して11年間が過ぎる。世の中の動きを見、これに適応していくこと、そして人生をまっとうすることが重要と心に深く刻み込んでいる。
若い頃の心に残る言葉
@子供の頃父から、「自分は家が貧しくて、長男でもあり家計を支えるため、数え年13歳で高等小学校を中退して、進学をあきらめた。しかし、新聞をしっかり読むことで、世の中で生きていく知恵が身に付いた。世の中の役に立つように努めなさい。」と言われた。
A会社に入って最初に配属された営業部では、実質的に学卒の技術者の採用から2年目である。安田部長(後の社長)から、「勉強しなさい。毎日30分でも勉強すると5年間で他の人と大きな差が付く。」と諭された。「やっぱりガス、Gas is best」のイメージコピーをつくり、お客様を大切にし、日銭を稼ぐ小売業の心を常に言われていた。。
B配属先での研修で遠藤PR課長(その後副社長)から、電通の吉田秀雄元社長の「鬼十則」を渡され、大きな仕事に取り組むようにいわれた。また、「大阪淀屋橋の本社にいると、世の中の動きがよく分かる。世の中の流れに逆らうことは通用しない。」と言われた。その後10年ほど経過したときに「ボス十則」という土光敏夫元経団連会長の言葉に、ご自分の考えを書き足したものを頂いた。「人生の最も重要な20〜50代を有意義に生きるために本人も上司もしっかり心がけるようにとあった。
しかし、仕事とお付き合いが中心で、長い間勉強を疎かにしてきたが、45歳で人生の大きな転機を経験して吹っ切れた。同じ45歳で長兄の英輔が志半ばで早世したが、自分にも同じ危機が訪れ、以降は「自分は生かされている」との気持ちになった。それから勉強を始め、会社を早期退職する時期には、かなり自信が付いてきた。
独立時の励ましのことば
退職時の挨拶状には、会社の経験を糧にして「これからの人生を本番と心得、世の中に貢献したい」と書いた。これに対して先輩、同僚など多くの方々から励ましの手紙を頂いた。最近パソコンに取り込んだデータを読み返し、熱い気持ちが涌いてきた。
C高校、大学の柔道部での先輩としてご指導いただいた吉村健氏(元三菱重工)の言葉を紹介する。
『……、御成功を心からお祈り申し上げます。先輩面をして申し上げることは何もありませんが、世間一般的には、事業を起こして成功するとは会社が大きくなり、売り上げが伸び利益が増し、所得が増えることのように言われますが、私はむしろ成功に至る過程で、自分の良心に反するようなことをやらなかったかどうか、その時その時にベストを尽くしたかどうかが大切であり、例え、万一一般的な成功に至らなくても、その人が「我が人生悔いなし」と思えれば大成功ではないかと思えます。
不要な心配はかえって迷惑とは思いますが、貴君は優秀で周囲の期待も大きいだけに、結果を急ぎすぎて、プレッシャーから身体をこわさぬかと心配しております。どうぞ御健康には十分注意され、山本泰三・大輪の花となられます事を心から期待し、お祈り申し上げます。』
安田元社長は、現役で亡くなられ、吉村先輩はご自身が65歳で早世された。「我が人生悔いなし」といえるために、残された人生を有意義に過ごしたい。