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第9号見出し

70歳を迎えてどう生きるか (その5) 『時間の価値をもう少し考える』

かつて、会社で、忙しい上司が、時間を有効に使うために部下の結婚式には出ないという方針を貫いていた。それでも、気の利いた記念品を頂くなど、細やかな心遣いをされていた。一方、「人生にはどのような経験でもむだなものはない。」と諭してくださる方もいる。二つの考え方、行動を矛盾しないように受け止めたい。

ところで、時間価値=効用/犠牲ととらえると色々なことが見えてくる。若い頃は、色々経験をつむことで、先の人生を豊かにすることにつながる。新入社員に「便所掃除をさせること」を実践している会社がある。頭で考えることには限界があり、実践を通じて現場を考えることにもつながるし、社内の整理・整頓など基本的な環境を整備して、よい仕事ができるようになるための基礎訓練ともいう。

会社等での時間の使い方

 時間を有効に使うことは、会社でも重要である。高度成長期は色々な不具合が顕在化しなかったが、成熟した低成長社会ではとくに余剰人員が削減され、ムダな会議は許されなくなった。何度も会議を行い、同じような結果から抜け出せないようではどうしようもない。日本ではものづくり現場での生産性は高いが、管理部門の生産性が低いと国際的に評価されている。会社にいるとき、会議時間は参加者の時間単価も考慮に入れて、短時間に質の高い議論をするよう意識していたか。毎月、本社で会議する。コミュニケーションの重要性を考えて、定時の会議時間の終了後に支社の方とマージャンなどをする方が有意義である。結果として自分の報告・議論を圧縮せざるを得ない場面を何度も経験した。技術関連情報は営業成績に直結する販売政策に対して関心も薄いので、要件を誰にどのように伝えるか工夫をした。

会社でも保安や生産設備など、間違いを認めにくい組織では、資料作りが重要になる。経営トップに報告し、誰もが納得する結論になる隙のない報告書を求める傾向がある。

自分が最終決断するという崖っぷちであることを意識して行動すると、上司・トップの信頼を得て、簡単な報告・コミュニケーションが可能になる。

一般に役所では報告書をつくるために時間感覚が鈍い。とくに国会や地方議会など議員からの要請に対して夜遅くまで回答文書を作る習慣が定着している文化がある限り改善は進みにくい。最近、育児休暇を自治体のトップなども取得する例が新聞に取り上げられるが、本当に定着させるためには、仕事の仕組みを代える必要がある。

高齢での時間の使い方

 高齢になると時間価値は若い頃の数倍になる。そのために、趣味、音楽鑑賞、旅行などでその効用、時間価値を大きくし、人生の終盤を充実させることもできる。

 

しかし、時間のムダ、犠牲となる時間の削減に努めることはもっと重要である。私は長年、技術士会環境研究会で講演会のお世話をしている。まず大事なのは、有効な話をしてくださる方の人選と、テーマ・内容調整である。ここがうまくいくと、適切に案内・PRをし、講演会は成り行きでよい。講師の紹介をする時は、講師の方と話し合った記憶を頼りにし、文書などは余程のことがない限り作らない。失礼に当たる部分があっても、発表、意見交換などの内容が充実すると、終了後。講師を囲んでの懇親会で、本音の意見交換ができて、講師も参加者も満足していただけたかを確認できる。

 

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